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松露酒造株式会社

創業76年の松露酒造株式会社の写真

鹿児島県と境を接する串間市。松露酒造は市街地にほど近い場所にあった。
会社を訪ねると矢野貞次社長は、「これは焼酎の宣伝にはならないけど、焼酎の蒸留粕の処理プラントが完成したというのがひとつうちの話題ですかね」と、蔵の道向かいにあるプラントについて話を始めた。

矢野貞次社長の写真

矢野貞次社長。13社が加盟する日南酒造協同組合の理事長も勤める

看板の写真

創業76年の松露酒造株式会社

焼酎粕を飼料と水に変える処理プラント

「今どこも焼酎粕の処理には苦慮しているんです。環境問題から海洋投棄や畑地散布が禁止に向かう中、なんとか焼酎粕を処理しないと焼酎が造れなくなるんですから。うちのプラントは成功した方だと思いますよ。焼酎粕を飼料と水にするプラントです。うちで出る焼酎粕は1日に10トンほど出ますが、これが100kgぐらいの飼料と、あとは浄化して水になります。
焼酎粕を飼料にする方法は他にもありますが、粕のほとんどを飼料にすると大変な量ができて、そうなると飼料を売るのがうちみたいな所では大変なんです。それに、一年中焼酎製造している所なら農家に継続して提供できますが、うちはシーズンだけなので、そんな点も考えてほとんどを水にする今の方法を選びました。飼料は、水分をぎっちりしぼって繊維質とか皮をパサパサの状態にしたものです。こうすれば量が少なくてすみますから。
3年前から試行錯誤で、平成15年の8月から使ってます」

焼酎粕処理プラントと廃液処理場の写真

焼酎粕処理プラントと廃液処理場

今も昔も地元串間で飲まれている焼酎蔵

蔵の歴史を聞かせてもらえますか?
「昭和3(1928)年に、この地域の農家10数人が集まって、『姥ヶ迫焼酎株式会社』を設立したのが始まりです。珍しいんじゃないかと思いますよ、株式会社にしたのは。
父が社長に就任したのは、昭和24(1949)年です。
当時は戦後すぐで生活もきびしく、焼酎を飲む人もそんなにいなくて、年間5000本(50石)ぐらいしか造っていませんでした。
それから、徐々に世の中がよくなっていくにつれ焼酎も売れるようになり、父も本腰を入れるようになって、松露酒造に商号変更したのが昭和46(1971)年でした。
ずっと地元中心でやってきてましたが、最近は、人口の減少と飲む機会が減ったこともあって、地元出荷が減ってますね。
それで3、4年前からうちも販路を外にも向けようかと、県外向け商品の開発にも取り組んでいて、やっと布石もすんだかなという時に、このブームでしょう。昨年から注文はくるけど、新規の分はかなりお断りする状態が続いてますね」

「新しい『麦』を試作中。できてからのお楽しみです」

「2~3年前から麦焼酎をわずかですが造り始めましたが、まだ製品にはなっていません。今年から増石して貯蔵したものを売っていこうと考えています。ただこの寝かせる(長期貯蔵する)というのは蔵にとって余裕がないとできないことなんです。ある程度芋の方にゆとりがないとできませんから。
でも、今までの麦焼酎とはちょっと変わった「えー、これも麦なの」というものを造ってみたいんです。麦を深く追求したいという麦焼酎の愛好家に拾っていただければなあと。どうゆうものかは、製品になってからのお楽しみですよ。
芋焼酎でも、今ウケているのはあっさりタイプですが、うちは味の濃い、言えば焼酎飲み(しょちゅのみ=焼酎好き)が飲むような焼酎です。つまり、自分たちがこういう焼酎が好きだから造る、その姿勢でやってきました。私たちとしては、いい焼酎を造り続ければいつか芽が出るだろうとやってきたら、こんなブームがやってきた。もっとも、こういう形で騒動が起こるとは思わなかったですが」
松露さんが造り続けるのはどんな焼酎でしょうか?
「造りはどこもそう変わらないとは思いますが、当然原料の芋(黄金千貫)は厳選して、麹は白と黒を使い分けて、酵母も『宮崎酵母』を使ってと…」

それぞれの蔵には「蔵つき酵母」がすんでいる!

「研究室があるような蔵元では、使いたいと思った酵母を純粋培養しながらそれを使うんです。うちなんかでは、県食品開発センターからシーズンが始まる時に分けてもらった酵母を、仕込みが終わるまでずっと使うんです。この酵母は宮崎酵母といって、センターで純粋培養したものですからスターターとして使います。
あとはもろみの中から次から次にもろみごとすくって継ぎ足していく、これを『差し元(さしもと)』と言います。そうすると何週間かするとそこの『蔵つき酵母(家つき酵母)』にみんななってしまう。蔵つき酵母というのは、壁とか空中にいっぱいいて、どこの蔵もその影響を非常に強く受けています。純粋酵母はそのままにしておくと、そこの蔵にいた蔵つき酵母が勢力を増して全部が蔵つき酵母になってしまうんです。だからうちの場合、スタートは純粋な宮崎酵母で、あとは全部うちの蔵つき酵母で推移するんです。うちの場合はこの方法で支障なく安定したもろみができているので、敢えてそのままでやってますね。
まあー、専門的なことはセンターで聞いて下さい。
(→トピックス「MK021(宮崎酵母)」参照)

焼酎好きが好む『芋らしい芋焼酎』。仕込むのは50年のベテラン杜氏。

松露酒造の「昔ながらの焼酎」とはどんな味ですか?
「うちは、製造の時に5人の専門の蔵人が造っているんです。杜氏はもう50年近くなるベテランです。その人たちは造りの期間だけ来てもらっていて、それ以外の時は自宅で農業されて、稲作りや芋作りをされるという昔からの、農閑期に焼酎でも造ろうかというやり方なんです。
そうやって出来るのはいわば昔ながらの焼酎。誰でもすぐとびつける焼酎ではなくて、焼酎を飲み始めて十分咀嚼してもらって、他にはないのかという時に『こういうのもありますよ』と提案できる酒になったんじゃないかと思いますね。
戦後の物資がない時代に造っていた50石の焼酎。もちろんわずかずつの量り売りだっただろうし、芋も荷馬車で持ってきたり、リヤカーで持ってきたり。そんな時代も、20年前に1500石造るようになっても、そして今も、私たちが『うまい』と思う焼酎をきちんと造ってきました。それは胸を張って言えますよ」

『松露』の写真

『松露』

『心水(もとみ)』の写真

『心水(もとみ)』

芋蒸し機の写真

芋蒸し機

仕込み室の写真

仕込み室

今年始めて黒麹で造った麦の一次もろみ(3日目)の写真

今年始めて黒麹で造った麦の一次もろみ(3日目)

仕込み2日目のもろみの写真

仕込み2日目のもろみ

常圧式蒸留機の写真

常圧式蒸留機

屋外貯蔵タンクの写真

屋外貯蔵タンク

和水タンクの写真

和水タンク。このタンクで1ヶ月以上前から割り水された焼酎が出荷される。奥2本が『松露』タンク、手前2本が『心水』のタンク

松露酒造株式会社

  • 所在地/串間市寺里1-17-5
  • 問合せ/TEL.0987-72-0221 FAX.0987-72-2883

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更新日:2021年4月5日

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