ここから本文です。

京屋酒造有限会社

まずは、宮崎県酒造組合の理事長を三代にわたって務める、京屋酒造社長の渡邊眞一郎さんに、芋焼酎ブームについて話を聞いてみた。

芋焼酎ブームだと言いますが、売れてますか?
首都圏で焼酎人気が高まってきた歴史からいうと、そば焼酎ブームがあって、現在は出荷量からいうと圧倒的に麦焼酎なんです。芋がこんなに注目されるのは最近になってからです。
それから芋焼酎は、宮崎や鹿児島の小さな蔵が、昔から少しずつ造ってきたものが多いんですよ。それぞれ味が違っていたりするものだから、「この焼酎は、あの親父が造っている焼酎だ」と語りやすいのも、好まれている理由じゃないでしょうか。

なぜ今頃になって芋焼酎なんでしょう?
そうですね。そば焼酎がブームになったのは、香りがソフトで、味もさっぱりしている。その上、きれいなグリーンのボトルに入っていて、それまでの焼酎とは全く違うイメージだったせいです。

そのあと、麦焼酎が出て、華やかな香りがあって、しかもそば焼酎より安い。このあたりで都会の人たちの焼酎のイメージが定着してきたようです。
そこへやってきた今回の芋焼酎ブームは、昔の「芋焼酎はくさい」という先入観がない世代が「おっ、これいいじゃない」と飲み始めたこともあるでしょう。
でも、本当の理由は、芋焼酎の醸造技術が落ち着いてきて、芋本来の「いい香り」を十分に引き出せるようになってきたせいです。本来、芋は他の原料よりも、軽くてキレのいい味わいをもっているんです。伸びるべくして伸びたと思います。

なるほど。伸びるべくして伸びた。ガンコに地元で愛される焼酎を造り続けてきた焼酎蔵の誇りが、じわじわと大消費地に向かって伝わっていった、ということなのだろう。

創業が天保5(1835)年という、歴史ある京屋酒造の蔵を見せてもらう。中庭では、自社農園で採れたコトブキ芋の皮むきに、近所から手伝いにやってくる女性がずらりと並んで作業中。
「こんなにきれいに皮をむくんですね。芋の写真撮ってもいいですか?」「芋だけね~。私たちも撮ってよ~」
同じ芋を使った焼酎でも、この皮のむき方を変えることで香りも味も違ってくるのだという。

年間二千石を全部このかめだけで造るんですか?
昔からね。かめ仕込みは、確かに手がかかります。ステンレスのタンクだったら、かめの10倍も20倍も一度に仕込めて、管理も楽でしょうが、もしかめ仕込みを止めなきゃいけなくなったとしても、1,000リットルぐらいの小さいステンレス容器で仕込みたいという気持ちはありますね。
それは、大きいタンクで人工的にコントロールすると、中の温度は理想的な美しいカーブを描くんです。でもそれでは、面白みに欠けるというか、優等生すぎるんじゃないかって思うんですよ。
小さいかめで仕込むと、自然の力で発酵していきますから、理想の温度よりも上がったり下がったり。そこを見極めて櫂を入れて調整すると、ギザギザを描きながら自然に仕上がっていく。そこに味の幅が出るんじゃないかと。これは勝手にそう思ってるんですけど(笑)。
仕込み蔵の2階で、焼酎の試飲をさせてもらった。並べてみると香りの違い、味の違いがよくわかる。
「これは有機栽培のコトブキ芋の皮を全部むいたもので、こっちは皮を一部残してむいたもの。それだけでも違うでしょ。少しずつ味と香りが変わるように造ることで、好みのものを探してもらえればいい。地元でウケる焼酎、都会でウケる焼酎、確かにありますね」

蔵のこだわりは何でしょう?
そうですね。造り方や原材料選びは徹底的にやって、レベルを高くもつ。その上で、テイストはいろんな味や香りを楽しんでもらう焼酎造りでしょうか。
うちは麦もそばも造っていますが、本来芋焼酎のメーカーです。とにかく芋に特化してやっていこうと思っているんです。例えば、使う芋もコトブキ芋のような赤紅系や、白い黄金千貫(コガネセンガン)。それの皮をむいたりむかなかったり、麹も白、黒を使い分けてみることで、新しい焼酎を造り出しています。
そうやって原料を気にし始めたら、栽培そのものも気になり始めて、これまた手のかかる有機栽培で芋を作ることになってしまって。最初は、赤紅芋のコトブキ芋が人気のある食用品種で、焼酎にするほど数がないというところから、自社で栽培しようと思ったんです。でも、化学肥料や農薬でやせていく土を見て、有機肥料に切り替えました。
大変ですよ。実際。社員2人が畑の専属で、年間のべ1,000人ぐらいのパートさん頼んで、経費だけでも市場で買う5~6倍かかって、おまけに形はそろってないし(笑)でも、これはうちの焼酎造りに必要なんですよ。必要だからこの方法になった。そう思ってます。

京屋酒造有限会社 の写真

京屋酒造有限会社

渡邊眞一郎社長 の写真

渡邊眞一郎社長

自社農園で栽培した芋の皮をむく作業の写真

自社農園で栽培した芋の皮をむく作業

工場入口に据わっていたのは、大正時代のコルニッシュボイラーの写真

工場入口に据わっていたのは、大正時代のコルニッシュボイラー。まだまだ現役だ

回転式ドラム の写真

回転式ドラム

時が止まったかのような仕込み蔵の写真

時が止まったかのような仕込み蔵。柱にも天井にも、この蔵の酵母菌が棲んでいるんだろう

屋根裏部屋にある昔の樽の蒸留機の写真

屋根裏部屋にある昔の樽の蒸留機

大正9年の麹ぶたの写真

大正9年の麹ぶた

量り売り用のカメの写真

量り売り用のカメ

量り売り用のカメの写真

『時代蔵かんろ』

ドラム の写真

京屋酒造有限会社

Share this

更新日:2011年11月29日

ページの先頭へ戻る