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千徳酒造株式会社

延岡市にある、県内唯一の清酒のみの蔵元におじゃました。
まずは応接室で、田丸眞社長にお話を伺った。

明治36(1903)年 「恒富酒造合資会社」設立
「当時は、清酒と醤油の製造販売をやっていたみたいです」

昭和19(1944)年 延岡にあった3つの酒造会社が合併して「日向酒造株式会社」設立

「この時に、醤油の醸造は廃止して、清酒一本になりました」
昭和36(1961)年 「千徳酒造株式会社」に社名変更
「私がここに入社したのはその翌年です。その当時まで県内には18の清酒蔵があり、うち15社が県北にありました。日向市を流れる耳川を境に、北は米の清酒、南は芋の焼酎というふうに分かれていました」

カメ貯蔵庫(櫻の郷醸造)

田丸 眞社長。県酒造組合(40社加盟)の副会長も勤める

創業当時の「恒富酒造合資会社」の写真

創業当時の「恒富酒造合資会社」

昭和23(1948)年に再建された「日向酒造株式会社」の写真

昭和23(1948)年に再建された「日向酒造株式会社」。以前の蔵は戦災により焼失

現在の「千徳酒造株式会社」の写真

現在の「千徳酒造株式会社」

地酒のこだわり

「清酒の原料は米で、その97~98%に県産米を使っています。昼夜の温度差の激しい地域で出来る米が清酒にはいいので、高千穂の米を使用してます。
高千穂の農家の方々が酒米研究グループを作って、“山田錦”など、酒造好適米の勉強もされています。また10数年前から県の農業試験場とJA高千穂で試作をして、“はなかぐら”という銘柄の酒造好適米もできました。その酒造米“はなかぐら”を100%使用した純米生原酒『はなかぐら』(60%精米)を、3年前から限定販売しています。
水も、五ヶ瀬川の伏流水を使用してますから、名実ともに“地酒”と呼べるのではないですか」

「うちが今まで続けられたのは、地元に強いということでしょう。県北での消費が8割強、残りが県内各地で消費され、県外にはほとんど出荷されてないですから。
全体的に今、清酒生産量が落ちてきています。当社の場合、ここ何年かは横ばいですね。それにはいろいろ原因もあるでしょうが、なんといっても我々清酒業者の怠慢でしょう。焼酎が健康にいいといって、ブームで上り調子になった時、まさか生産量が逆転するなど思いもしなかったですよ。つい先日も東京の居酒屋に行って清酒を注文したら、まわりの若い人たちはほとんど焼酎ですもん。日本の国の酒である清酒を飲まなくてどうするのかと言ったくらいです。
それは昔からすると、焼酎の品質は格段よくなってます。本格焼酎業者の努力の賜物でしょうね」

宮崎県酒造好適米を100%使用した清酒『はなかぐら』の写真

宮崎県酒造好適米を100%使用した清酒『はなかぐら』

蔵の案内・造り

蔵の案内をしていただいたのは、中矢恒利専務。
まずは、別棟にある精米室から。

「ここにあるのは縦型精米機と言って、中にローラー(砥石みたいなもの)が入っていて、上から降りてきた米を何回も循環させます。40%精米(60%がぬかになる)の大吟醸用の米になると、精米に2昼夜約50時間かかりますね。いま自家精米をしている清酒蔵は、4割にも満たないといわれてます」

次に、蔵人部屋の横を通って造りの部屋へ。

「仕込みの間、この部屋に蔵人が寝泊まりします。杜氏は一昨年まで兵庫県丹波篠山から呼んでいましたが、今はうちで育てた杜氏が酒造りをやってます。経験が要りますからね。10年造りの経験をやって、なんとか一人前というところでしょうか。
昭和45(1970)年頃まで、篠山からと地元と、併せて30名ぐらいの蔵人がいました。その後は機械化が進み、今は10名ぐらいでやっています。もっとも、いくら機械化が進んだといっても、まだ10名は要りますから、大変な仕事です」

縦型精米機の写真

縦型精米機。以前は、水車を利用して精米が行われていた

忙しく通り過ぎられた杜氏さんの写真

忙しく通り過ぎられた杜氏さん

清酒造りの工程

  • (1)洗米・浸漬
    昔は米を直接手で洗っていた。米が砕けるので、現在では布の袋に入れて洗っている。米が水を吸う時間も、ストップウォッチで計って「水切り」する。
  • (2)甑(こしき)
    甑の中に洗米を入れ、蒸気を送り込んで蒸す。
  • (3)保冷機
    蒸し上がった米を冷やす保冷器。麹用は室(むろ)に、酒母(しゅぼ)用は酒母室に、もろみ用は仕込み室へと、エアーコンベアで送る。
  • (4)室(製麹室)
    製麹室は部屋が2つあって、蒸米に麹菌を混ぜて一昼夜おく部屋がひとつ。次に、別の部屋に移してもう一昼夜寝かせ、48~50時間で麹(こうじ)ができる。大吟醸用になるともっと時間がかかる。室の中の室温は30度。
  • (5)酒母室
    麹と蒸米と酵母を水に入れて酒母を造る。2週間から1ヶ月かかるものもあり、室温は5~6度。昔は、泡の出る酵母を使用していたので、絶えず櫂を入れて泡を沈めていた。
    その時唄われていたのが『酒造り歌』で、その歌で時間を計っていた。
  • (6)仕込み室
    通常三段仕込みで、そえ・なか・とめ、と呼ばれる。
    1日目/酘(そえ)・・・一次仕込み。酒母に蒸米と麹と水を加えて、もろみを造る。
    2日目/「おどり」・・・酵母が元気が出るように仕込みを休む日。「おどり」とは、酵母が踊るくらい元気が出るようにという意味。
    3日目/中(なか)・・・2次仕込み。もろみに、蒸米と麹と水を加える。
    4日目/留(とめ)・・・3次仕込み。2次仕込み同様、蒸米と麹と水を加える。
    ※蒸し米を加える量は、一次が1とすると、二次が2、三次が3。これで普通15~16日発酵させる。その日数は、本醸造で30日、大吟醸になると35~40日。いい酒になるほど日数がかるのは、低温で発酵させるため。
  • (7)上槽
    発酵させたもろみをしぼると酒ができる。大吟醸の場合はもろみを袋に入れて吊し、1昼夜かけ下に滴ってくる酒だけを集める。
    この後、検定、ろ過、火入れ(65度のお湯の中をとおして殺菌する)と続く。
  • (8)貯蔵
    普通15度くらいの室温で貯蔵するのが、熟成の適温。ここでは8度ぐらいに設定してある。この温度は、酒が健全に保たれ、若いおいしい酒を提供するため。
  • (9)出荷
    出荷前に和水(アルコール度数を調整のために水でわること)して、ビン詰め・出荷。
    清酒は通常15度に和水する。原酒のアルコール度数は20度前後、大吟醸で16、17度ぐらい。いい酒ほど和水する水の量は減る。

甑の写真

甑(こしき)。回りが保温のために囲ってある

室の外観の写真

室の外観

室の内部の写真

室の内部。内部には温床線が張りめぐらしてある

酒母室にあるタンクの写真

酒母室にあるタンク

仕込みタンクの写真

仕込みタンク

大吟醸用タンクの中の写真

大吟醸用タンクの中をのぞく。見えているのは、冷却器

2人で操作するもろみ絞り機の写真

2人で操作するもろみ絞り機。昔は木の槽(ふね)で、20人は必要だった

貯蔵庫の写真

ひやっとして暗い貯蔵庫

インタビュー1

杜氏 門田賢士さん

14年前に入社された門田さん。

「以前は丹波篠山から呼んでいた杜氏のもとで勉強しながら、一昨年の11月から私が担当するようになりました。
カンと体力勝負の仕事です。仕込みの時期は泊まり込みで、正月も休みがないですから。ちょっと前、清酒の級別が廃止されて、いい感じでなってきたなとは思っていたんですが、現在おちてますからね。清酒がなくなるようなことはないと思いますが、今後いいものを造っていかないと私たちは生き残れません。酒造りに携わるのは限られた人数ではあるんですが、手をかけたほどだと思っています」

カメ貯蔵庫(櫻の郷醸造)

櫂入れ中の杜氏 門田賢士さん

インタビュー2

取締役社長 田丸 眞さん

「今後の取り組みとして、いま、若い人、特に女性をターゲットにした商品の開発をやっています。中でも2004年2月から発売した、『グズル(guzzle)』は、アルコール分が8度で、微発泡。冷たく冷やして、新しい感覚で楽しんでもらうお酒です。従来の清酒のワクにとらわれない新商品で、清酒のファン層を広げていければいいですね。
当社は、県内の清酒の蔵元として名が通ってきていますから、この蔵をなくすわけにはいきません。今はきびしい状況ですが、絶対清酒が見直される時が来るよう、今まで以上に真剣に取り組みたいと思ってます」

カメ貯蔵庫(櫻の郷醸造)

低アルコールの微発泡酒
『guzzle』

千徳酒造株式会社

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更新日:2011年12月1日

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