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アカツキ酒造合資会社

じきに県境。醸造場はここ?

高千穂から熊本県高森へ向かう国道325号の写真

高千穂から熊本県高森へ向かう国道325号。河内は関所があった交通の要所だった

高千穂町を東西に走る国道218号バイパスから、熊本県高森町へ向かう国道325号で県境へ向けて走ること約15分。道路の改良工事が続く山あいを抜けると、ぽっかりと空が開けた集落が現れる。ここが昔は、肥後との境だったのだろう「河内関所跡」の石碑が残る、河内地区だ。

めざすアカツキ酒造は、河内のほぼ中心部にあった。国道沿いに年代物の『暁』の看板を見つけたものの、蔵のようには見えず…。酒屋さんか? と思いもう一度看板をみると、一番下に確かに「アカツキ酒造」の文字。

こんにちは~。
「あぁ、遠いところをどうもどうも」と、出てこられたのがご主人の河内利雄さん。「まず、蔵を見られますか?」と案内されるままについていくと、家屋のすぐ脇から下へと続く階段。蔵の入口はその下にあった。ガラリと引き戸を開けると、階段はまだ下へと続く。
「この家は斜面に建っているんですよ。この下が昔の道です」

河内利雄の写真

河内利雄さん。肩書きは「認定杜氏 代表社員」とあった

アカツキ酒造の写真

真ん中の黒っぽい大きな建物がアカツキ酒造。河内川沿いに続く細い道が旧道

アカツキ酒造の看板の写真

国道325号沿い。アカツキ酒造の名前はこの看板しかない

家屋から醸造場へ続く階段の写真

家屋から醸造場へ続く階段

「昔はね…」と語る歴史がここにある

階段を下りたところは、使い込まれた大きな鉄釜やホーローの甑(こしき)が置かれていた。仕込み時期ではないので、しばし休憩をしている老兵という佇まい。

「今はボイラーを使ってますけど、昔はホラここから薪を焚いていたもんです」

見上げる位置に、小さなカミサマが祀ってあった。
隣の部屋に入ると、「半自動麹室」と書かれた木の扉があった。

「今は回転式のドラムで麹を造るところが多いでしょう。うちはこの部屋で麹を作ります。昔は、麹菌から胞子が飛ぶくらいまで置いていたもんですけど、今は胞子が出る直前で使ってますよ」少し湿り気を感じる部屋いっぱいに、麹の豊かな香りが漂っていた。

蔵の中にあるものはどれも使い込まれたものだが、中にひとつピカピカに光るステンレス製の常圧蒸留器があった。10数年前に球磨焼酎の醸造元から譲り受けたものだという。ライトな飲み口の焼酎が短期間でできる減圧蒸留が主流の今でも、昔ながらの醸造法を守り続けている証だ。

「今は焼酎粕の問題があって、仕込んでから35日から45日かけて蒸留するんですよ。前は1カ月ぐらいだったんですが、余分に置いた方が粕が少なくなるんですよ。粕は焼却処分するようになりました。昔は牛のエサに喜ばれとったんですが…」

米を蒸す甑や大釜の写真

米を蒸す甑や大釜が並ぶ

レンガのかまどの写真

薪をくべて湯を沸かしたレンガのかまど。今はボイラーがその役目をする

麹室の入口の写真

麹室の入口。扉に貼ってあるのは宇納間地蔵(北郷村)の火伏せ地蔵尊の御札だ

麹室内部の写真

麹室内部。天井から下がるのはタライ。湿度調整もカンがものをいう

常圧蒸留器の写真

常圧蒸留器。減圧蒸留器が主流になる中、昔ながらの方法を守る

土地の人が喜んでくれる、それがなにより

アカツキ酒造の創業は昭和9年。近くの田原地区で、農家が出資して作った清酒の蔵が前身だった。
「玄武という名前の酒を造っていましたが、うまくいかなくなったのを親戚の人が引き受け、その後父が継承し、父から私が継いでもう50年になります」

現在の生産量は年間約13キロリットル(70石)。多い頃は50キロリットル造っていたこともある。
「仕込むのは11月ごろから翌年の春まで。気温が高くなると雑菌が入って、麹が作れなくなるんですよ」

ひとりで焼酎造りをされるんですか? の問いに、河内さんは笑いながら「仕込みや作業の時はウチんと(妻のキワさん)と、女の人たちがふたり手伝いに来てくれるから。私ゃあんまり仕事はしとらんですよ」と。

もうひとつ尋ねた。
「アカツキ焼酎のこだわりって何でしょう?」
「……」しばし考えたあと、河内さんはこう言った。

「焼酎造りは家業ですから。特別に何があるわけじゃないが、こんな山の中で造り続けている焼酎に、いろんな人が『ガンバレ!』って言ってもらっているように思います。土地の人たちが、やっぱり昔ながらの焼酎が欲しいと、飲んでくれるのがなによりですよ」

あぁ、本当に。造ったものを喜んでくれる人がいる。これがモノ作りを生業とする仕事人の原点だ。
河内の『暁』は、宮崎から熊本へあっという間に走り抜けて行きそうな小さな河内地区に、今もしっかりと根付いた焼酎だった。

贈答用の陶器ビンに入った『暁』の写真

贈答用の陶器ビンに入った『暁』。通常は一升瓶で、20度、25度、35度がある

アカツキ酒造合資会社

  • 所在地/高千穂町河内1835番地
  • 問合せ/TEL.0982-75-1612

※店頭での小売りあり

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更新日:2011年12月1日

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