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正春酒造株式会社

黒木正英社長と奥様の写真

黒木裕章社長と奥様。二代目に負けないおしどり夫婦?

西都市の南部、サッカーのキャンプなどが行われる清水台運動公園の近くを通って三納地区へ。美しい田園風景を走り、雁亀橋を渡ると、道路からも見える大きな蔵に「正春」の文字が目に入る。1868年、つまり明治維新からここで伝統の蔵を守り続けている「正春酒造」にお邪魔した。これまでの合資会社形態を改め、この四月から株式会社として生まれ変わった蔵元である。

社名でもあり、代表銘柄でもある『正春』の名の由来はロマンチックだ。夫婦仲が良いと評判だった二代目社長の黒木正英氏と奥方の春さんの名を組みあわせて命名したという。
「それが昭和31年の話です。法人化にともない、なにか社名を付ける段になってそう決めたといいます。それまで特に屋号はなく、この当たりの集落の地名をとって『吉田の焼酎』と呼ばれ、地元の人を相手に量り売りをしていたそうです。このあたりは酒造が盛んで、五,六件は造り酒屋があったらしいですよ」と、五代目社長の黒木裕章さん。ちなみに奥様も会社の事務を執っていらっしゃる。二代目社長のように愛妻家なんですかと訊くと、いやぁどうでしょうか、と照れていらした。そういえばここ西都は、ニニギノミコトとコノハナサクヤヒメの恋物語が伝わる地。こちらの商品にも『逢初』『このはなさくや姫』と、地域にちなんだ名の商品がある。土地も人もロマンチックなのである。

「うちの焼酎の特徴は、酒質が『女性っぽい』ですね。飲み口がソフトで、女性や初心者でも飲みやすい、やさしい味なんです」と黒木社長。原料は新富産の芋を使い、シーズン時は毎日搬入している。麹にする米は地元産を中心にし、優しく丁寧に仕込む。

昔『吉田の焼酎』と呼ばれていた地名はバス停に残る

昔『吉田の焼酎』と呼ばれていた地名はバス停に残る

これまでほとんど芋焼酎を造っていたので、作業は毎年9月から12月までだった。しかし三年ほど前から麦焼酎を造り始めたため、1月から3月も稼働時期となった。お邪魔したときはちょうど麦を造っている最中。工場の稼働率がアップした。
「原料が麦でも正春らしさがちゃんと残るよう、麦麹ではなく米麹を合わせました。うちらしさを追及した結果です」
芋・麦合わせて年間四千~五千石を生産する。最近は県外への出荷も増えてきた。遠くは東北まで、そして首都圏など大消費地でも販売する。

蔵の中を案内してもらった。まず目に入ったのが「焼酎のできるまで」という図解の看板。
「地元の小中学生が工場見学をしたりするものですから。でもどこまでかみ砕いて説明すればいいか、難しいですね」
焼酎の味わいを知らないと、ぴんとこないかもしれませんねぇ。
ドラム式の製麹機で一日、通称「三角型棚」でさらに一日米麹を寝かせ、麹菌を増やす。ほのかに漂うもろみの匂い。芋焼酎と麦焼酎では、麹菌も違えているそうだ。そして麹菌を増やした水と酵母と混ぜ、一次発酵タンクへ。水は地下水。わき出る水の清冽なことが、この地の酒造りを盛んにしたのでしょう、と社長。やはり焼酎にとって、水は命だ。
タンクは常に温度を27度に保つ。
「一日何度も混ぜないとすぐに温度が上がっちゃうんですよ」と言いながらかき混ぜる職人さん。ボコボコと音を立てて一次発酵したもろみは、原料と合わされ、二次タンクへ。ここで原料の麦と合わされ、二次発酵。60個ほど並ぶタンクで、二次もろみがふつふつと沸き上がっている。やはり生きている、と実感する。

減圧蒸留機の写真

正春らしい優しい味わいを生み出す減圧蒸留機

柄杓の写真

この柄杓ですくって試飲し、味や香りをチェック

そして蒸留。こちらでは減圧蒸留機と常圧蒸留機を併用している。減圧蒸留機で蒸留したアルコールはすっきりとした飲み口になる。一方常圧だと本格的な仕上がりに。この両方の味わいが多彩にブレンドされ、独自の味として正春のさまざまな商品に反映されるのだ。味を決めるのは平川さんという社内のブレンダー。彼の舌に商品の如何が掛かっている。
蒸留機の脇に、地下に埋められ蓋だけ出してあるタンクがあった。
「検定タンクですよ」
それぞれの蒸留機で精製された原酒をため、出来具合を検定するのだ。機械を使ってアルコール度数を測るほか、杜氏さんや平川さんなど、社内の専門家が柄杓ですくって味や香りをチェックする。最後はやはり、人間の味覚や嗅覚が頼りなのだ。

できた原酒は倉庫内や敷地内の貯蔵タンクで熟成される。出荷までに少なくとも半年から一年は寝かせるという。ブレンドや瓶詰めも工場の中で行われる。全国に向けて、トラックが勢い良く運んでいく。
杜氏の松下勝丸さんにお話を聞いた。松下さんは、正春で酒造りに携わって40年。この13年を杜氏として現場を指揮している。
「酒造りでいちばん気をつけているのは温度管理。同じような気候でも微妙に温度が違うと仕込みが変わってくる」
社長が小さいときからこの蔵にいらっしゃったという。
「40年前から携わっているが、うちの酒はいいと思う」
自分でいいと思っているだけかもしれんが、と苦笑し、最近は売れ行きもいいらしいな、と付け加えた。

黒木社長の焼酎にかける思い。
「焼酎は文化の中で育まれてきたコミュニケーションツールなんです。皆で楽しく飲んでもらえればいいと思います」
正春の酒造りとはなんでしょう
「どの酒造会社も独自の個性があり、それは他が真似しようとしたってできない。うちも、焼酎ビギナーでも飲みやすく、何杯飲んでも飽きない、正春酒造らしい焼酎を造っていきたい。」
伝統ある蔵元の5代目を引き継ぐものと子供のころから思っていた黒木社長。世が焼酎ブームであろうがなかろうが、うちらしい焼酎づくりをしていけばいいと語る。
伝統の製法を守り、堅実な酒造りを続ける正春酒造。そのすっきりとした飲み口が、今宵も多くのファンを酔わせる。

『正春』の看板の写真

『正春』の看板は道路からもはっきり

工場と事務所の写真

工場と事務所

工場見学の小中学生のための看板の写真

工場見学の小中学生のための看板がある

ドラム式製麹機の写真

まずドラム式製麹機で一日

三角棚の写真

次に三角棚でもう一日麹菌を増やす

一次もろみ の写真

ふつふつと泡を立てる一次もろみ

タンクには冷却用のホース

タンクには冷却用のホースがまいてある

温度が上がりすぎないよう、ときどきかき混ぜる

温度が上がりすぎないよう、ときどきかき混ぜる

ずらりと並ぶ二次タンク の写真

ずらりと並ぶ二次タンク

検定タンクの蓋の写真

検定タンクの蓋には中身のデータが書かれている

検定タンクは地下に

検定タンクは地下に据えられている

屋内に置かれた貯蔵タンクの写真

屋内に置かれた貯蔵タンク

貯蔵タンクは屋外にも

貯蔵タンクは屋外にも

杜氏の松下勝丸さん の写真

40年間正春の味を守り続ける杜氏の松下勝丸さん

正春酒造株式会社

  • 所在地/西都市三納10029
  • 問合せ/TEL.0983-45-1013

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更新日:2011年12月1日

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