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50の物語集 伝説編

第三十二話 椎葉“平家落人伝説”|椎葉村

那須大八郎(なすだいはちろう)鶴富姫(つるとみひめ)恋物語(こいものがたり)

今から、八百年ほど前のことです。

今の山口県下関の壇ノ浦(だんのうら)では、平家(へいけ)と源氏(げんじ)の最後の戦いがくり広げられました。

はげしい戦いの末に平家は敗れ、生きながらえた者は、散り散りばらばらになって、逃げていきました。そして、ある一行は、けわしい山を越え、道なき道を通って、ようやく山深い椎葉にたどり着きました。

「ここまでくれば大丈夫だ。敵もこんな山奥までは追いかけてこないだろう」

平家の一行は、ほっと胸をなでおろしました。

しかし、人のうわさは速く伝わるものです。

いつしかこのことは敵方に知れわたることとなり、源氏の総大将、源頼朝(みなもとのよりとも)は、家来の那須与一(なすのよいち)に追い討(う)ちを命じました。

ところが、与一はこのとき病気にかかっていたので、代わりに弟の大八郎が椎葉に向かいました。

しばらくして、ようやく椎葉にたどりついた大八郎でしたが、そこで目にしたものは…、戦う気持ちを忘れたかのように一心に畑をたがやす平家の人々でした。

「ここにいる者たちは、もはや源氏に対する憎(にく)しみや敵意などもっていない」

そう感じた大八郎は、
「椎葉の平家の残党(ざんとう)は一人残らず討ち果たしました」と、頼朝にうその報告をした後、この地に屋敷(やしき)を建て、これからもこの場所で生活していこうと決めたのでした。

それからというもの、大八郎は、平家の守り神をまつる神社を建てたり、平家の人々に農業を教えたりと、彼らの生活を助けながら、ともにくらしていました。

その後、しばらくして大八郎は平家の「鶴富」という名の美しい姫と出会いました。静かな山里で親しく話をするうちに二人の間に恋心がめばえました。

しかし、二人は源氏と平家のかたき同士です。

最初、二人は人目をさけて会っていましたが、そのうちに大八郎は愛する鶴富姫と生涯(しょうがい)をともにすることを決めました。二人の結婚を村中が祝福しました。

しかし、幸せな日々は長く続きませんでした。
ある日のこと、大八郎に、
「すぐに椎葉を離(はな)れ、戻ってくるように」
との命令がおりたのです。

そのとき、すでに鶴富姫のお腹(なか)の中には大八郎の子がやどっていました。

しかし、命令ですから大八郎はもどらなければなりません。

いよいよ椎葉の地を離れる日がきました。

大八郎は鶴富姫に向かって、
「とうとう、この日がきてしまった。おまえのお腹の子は確かに私の子だ。もし、生まれてくる子が男の子なら、私のふるさとによこしなさい。もし、女の子ならこの地で育てるがよい」
と言い残すと、親と子の証拠の品として、刀を与えました。

大八郎が椎葉の地を離れた後に、鶴富姫は出産しました。生まれた子は女の子でした。

母となった鶴富姫はその子を大切に育て、その子が成長すると婿(むこ)を取りました。

そして、愛してやまない大八郎の「那須」の姓を名乗らせたといいます。

※神さまメモ「平家(へいけ)と源氏(げんじ)」
平家は、「平(たいら)」の姓をもつ一族で、源氏は「源(みなもと)」の姓をもつ一族です。平安時代の終わり(十二世紀末)に、平家と源氏は激しく政権(せいけん)を争いました。

【鶴富屋敷(つるとみやしき)】(椎葉村)
鶴富姫と那須大八郎の悲恋物語の舞台となった屋敷です。
。 平地の少ない椎葉特有の部屋が横一列に配置された並列型民家で約300年前の建築といわれています。
国の重要文化財に指定され、「那須家住宅」とよばれています。近くには鶴富姫が化粧に使い、また、大八郎に水を汲んだといわれる「鶴富姫化粧の水」があります。

【椎葉厳島(しいばいつくしま)神社】(椎葉村)
平清盛が創建した広島の厳島神社を分社した神社で、平家の守り神が祀られています。
椎葉の地に暮らすようになった那須大八郎が平家一族のために造らせたものといわれ、鶴富屋敷に隣り合う小高い丘の上にあります。

【八村(やむら)スギ】(椎葉村)
別称を「十根のスギ」といい、十根川神社の境内にあり、椎葉を訪れた那須大八郎がこの地に来て植えたといわれています。
樹齢約800年、幹周りは約19mで、単独の幹としては県内最大の巨樹です。国の天然記念物に指定されています。

【十根川(とねがわ)地区】(椎葉村)
平家討伐のため、椎葉を訪れた那須大八郎がこの地に陣屋を構えたといわれています。
椎葉村特有の各部屋が横に長く配置される「一列型平面形式」の民家からなる建造物群と石垣が重なり合い、美しい景観をつくりだしています。日南市飫肥、日向市美々津とともに、県内3ヶ所の国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。

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