更新日:2011年12月1日
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近代的な観光資源がない村に、どうしたら人が呼べるのか。九州山地の山間部にある諸塚村が約20年前から取り組んだ交流事業は、あるがままの自然、受け継がれた村の文化をそのままに体験してもらうエコツーリズムだった。都市部に生活する人たち癒す諸塚型エコツアーとは?
「こんにちは~。お世話になります」
口々にあいさつを交わしながら家の中へ。外の明るさに慣れた目が、しばし時間をかけて見たものは、広い土間、かまど、天井の大きな梁。薪の燃える匂いが漂ってくる。
「古い家でしょう。130年ぐらい前の家ですよ」と教えてもらったのは甲斐光さん。諸塚村が交流事業を始めるにあたって、最初に作った古民家を利用した宿泊体験施設「やましぎの杜」の管理者であり、エコツアーの指南役でもある。
まちむら応縁倶楽部エコツアーは、週末を利用した1泊2日。この日の参加者は10名ほど。30歳代から70歳代までいて、初めての人も常連さんも、すぐに打ち解けた笑顔になる。

個人で利用できる宿泊所でもあり、年間500人ほどが利用する

エコツアーの指南役でもある甲斐光さん
荷物を開け放った縁側に置いたまま、早速畑へ。今回最初のカリキュラムは、そばの種まき。
まずは手順を教わる。
「蒔き方は、最初は広くまんべんなく蒔く『蒔き落とし』。端の方はピンポイントで蒔く『地獄蒔き』。蒔き終わったら、鍬で薄く土をかけていきます」
蒔いてみる。そして、地面をよく見てみる。うわ~、まばら・・・。
「歩幅を一定にしておんなじ間隔で、おんなじ量を蒔いてくださいよ~。まばらだと、そこだけそばが太って、茎が倒れて収穫が減るんですよ」
甲斐さんが声をかけるけれど、そりゃムリだ。だいたい同じ間隔で歩けない。
しかし、足の裏に伝わる土の感覚が、上手じゃなくてもいいよね、という気分にさせてくれる。
そんなこんなで、あとで聞いたら、ずいぶん余分に種を蒔いたらしい。甲斐さんゴメン。収穫の時はまた来ますから。・・・こうやって常連ができるに違いない・・・。

蒔くのは在来種のそば

「仕事はみんなでやれ、うめもんなひとりで食え(おいしいものはひとりで食べろ)って、昔ばあさんがそんげ言いよったがな」
「ははは、そりゃいいなぁ」
そば蒔きのあとは大鍋で芋飴づくり。
甘藷を茹でて、裏ごしして、麦芽を混ぜてひたすら煮詰める。できあがるまでは一昼夜。ポンと口に放り込む飴がこんなに大変な工程を経ているのか・・・食べ物のありがたさを痛感する。
飴作りの大鍋をかきまわすかたわらで、夕食の準備が始まった。
野菜は役場近くの農産物販売所で調達したもの、甲斐さんの畑で採れたもの。
なんとなく分担が決まって、次々に料理ができあがる。囲炉裏で話に花が咲くグループも、見ると炭火でナスを焼いていた。
「山に来ると空気が違います」
「心の底から人とふれあえる場所ですよ」
「かまどで作った料理のおいしいこと」
参加者の声はさまざまだが、どの笑顔も満足そう。
「私たちは外に出たことがないから諸塚のよさを知らずにいました。何百年も続いた家を捨てて山を下りる人がいるのに、そんなところに人が来るのか。そう思っていました。けれど、今はやってよかったと思います。『諸塚がいい』と喜んでくれる人たちがいる。そんな人が新しい情報を運んでくれる。本当に楽しい」
甲斐さんの言葉に、山の暮らしの厳しさと豊かさが伝わってきた。諸塚で過ごす2日間、きっといろんなことを感じられるはず。

絞った汁に麦芽を加えてひらすら煮減らすと飴になる

ゆでた芋をつぶして煮汁をしぼる

地焼酎を酌み交わす晩ご飯
諸塚村まちむら応縁倶楽部 エコツアー
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